性器に関する症状
「精液に血が混ざった」「射精時に痛みがある」
前立腺がん,前立腺肥大症,前立腺炎など
若年の方は前立腺炎といった炎症による出血の可能性、高齢の方は前立腺がんの有無を調べる必要があります。
前立腺炎とは前立腺に炎症を起こした状態です。「急性前立腺炎」と「慢性前立腺炎」はまったく別の疾患であり治療法も異なりますが、どちらも精液に血液が混じったり、射精時の痛みが出たりします。「急性前立腺炎」は、尿道から進入した細菌が前立腺に感染して発症します。前立腺が炎症のために腫れて肥大しまい、強い排尿障害や排尿時の疼痛、会陰部の痛みなど出現します。また発熱があるのも特徴のひとつです。「慢性前立腺炎」の発症には疲労や飲酒、長時間の座位での姿勢などが関係し、比較的若い男性に起こりやすい病気です。残尿感や頻尿などの排尿の症状や、陰茎、陰嚢、会陰部(陰嚢と肛門の間)などに痛みや不快感が発生します。発熱を伴うことはありません。
前立腺がんの精査には、まず血液検査にて血中のPSA値を調べます。PSAは「Prostate Specific Antigen(前立腺特異抗原)」の略で、4.0ng/mL未満が正常値とされており、4.0ng/ml以上の方が前立腺がんを疑う値となりますが、4.0ng/mL未満であっても経過とともに上昇傾向がある場合は注意が必要です。前立腺がんの診断にはエコーや直腸診(直腸内指診)も有用です。エコーは前立腺の大きさや癌の存在を検査することができます。直腸診は肛門から直腸へ指を入れて前立腺を触診する方法で、前立腺の大きさやがんの広がりを調べることができます。これらはPSA検査と組み合わせて行うことで、前立腺がんの診断の精度を上げることができます。
「亀頭や陰茎にイボができた」
尖圭コンジローマ,陰茎腫瘍など
コンジローマは、性行為やそれに類似する行為で、皮膚や粘膜にある小さな傷からHPV(ヒトパピローマウイルス)が感染し、陰茎や陰嚢、外陰部にピンクや褐色の数ミリのイボができ徐々に増大します。男性の多くは亀頭や冠状溝などに発生することが多く、感染後1~3ヶ月程度でイボとして肉眼で確認できるようになりますが、治療をせずに放置するとイボが増加、大型化して治療が難しくなります。コンジローマは性感染症のひとつであるためパートナーの方の治療も必要であり、他の性感染症もチェックしたほうがよいでしょう。コンジローマは主に良性型のウイルスが原因とされていますが、悪性型のウイルスが原因である場合は陰茎腫瘍(がん)に進展することもあるため、厳重な経過観察が必要です。
「陰茎が腫れている」「陰茎が赤くなっている」
亀頭包皮炎,性器カンジダ,性器ヘルペスなど
幼児の場合は亀頭包皮炎などの炎症による腫脹の可能性があります。亀頭包皮炎は、亀頭と包皮の間に炎症が起こり包皮が赤く腫れてしまったり、包皮内に膿がたまったりします。抗生剤の塗り薬や内服薬で治療します。
大人の場合は幼児と同じく亀頭包皮炎の可能性はありますが、性器カンジダや性器ヘルペスなど性感染症の可能性もあり注意が必要です。亀頭包皮炎は塗り薬や内服薬で治療できますが、性器カンジダや性器ヘルペスは性感染症であるためパートナーの検査も必要になります。性器カンジダや性器ヘルペスも塗り薬や内服薬での治療になりますが、再発することもあり、外陰部を清潔に保つことも重要です。
「睾丸が腫れてきた」「睾丸が硬い」「睾丸に痛みがある」
陰嚢水腫,精巣腫瘍,精巣上体炎、精索ねん転など
痛みを伴わずに睾丸が大きくなってきた場合は、陰嚢水腫や精巣腫瘍の可能性があります。
精巣腫瘍の多くは悪性の腫瘍であり、痛みや発熱などが無く精巣が大きくなってきたときには精巣腫瘍の可能性があります。精巣腫瘍の検査はエコー検査で精巣の状態を確認します。精巣腫瘍は肺、リンパ節、肝臓、骨などへ転移することもあるため、CTなどで転移の有無を確認する必要があります。また、採血で腫瘍マーカーの上昇が無いかを調べます。この腫瘍マーカーは、病気の進行具合や治療効果を示す指標にもなります。精巣腫瘍の診断がついたら手術で精巣を摘除し、腫瘍の組織型を調べて追加治療が必要かを判断します。
陰嚢水腫は、精巣の周囲に浸出液が貯留して陰嚢が膨らんでしまう疾患です。一般的には疼痛はありませんが、大きい陰嚢水腫や精液瘤では不快感が出現する事があります。腫瘤は弾力性があり触るとやわらかく感じますが、浸出液が緊満した状態では硬い腫瘤として触れることもあります。成人の陰嚢水腫または精液瘤は小さく症状が無ければ治療の必要はありませんが、自然に消失することはなく、増大傾向のあるものは陰嚢に細い針を刺して内部の浸出液を抜くことができます。ただし、またしばらくすると浸出液がたまってくる場合もあるので、手術で治すこともできます。
痛みを伴う場合は精巣上体炎などの炎症や、若年者では精索ねん転の可能性もあります。精巣上体とは、精巣の横に位置する器官で、精巣で作られた精子を成熟させる働きをしています。精巣上体炎は尿道から進入した細菌が精巣上体に感染することで発症します。若い方は性感染症として発症することもありますが、高齢の方では前立腺肥大症、前立腺がんなどの排尿障害が原因となります。痛みは進行すると陰嚢全体に疼痛が広がり、精巣全体が硬く腫れます。尿検査で尿に出血や細菌がいないかを調べ、エコーで陰嚢内の炎症の程度を確認します。軽症から中等症では外来通院での抗生剤治療が可能ですが、重症の場合は入院での治療が必要になります。
学童期では、睾丸がねじれて血流が途絶し睾丸の腫大と疼痛が出現する精索ねん転の可能性があります。精索ねん転では早急にねじれを解消し血流を再開させないと精巣が壊死してしまうため、緊急手術が必要となります。すぐに泌尿器科へ受診して下さい。
またこれらの症状では、お腹のなかの腸や腹膜が鼠径部から陰嚢内に飛び出してくる鼠径ヘルニア(脱腸)や、おたふくかぜ(ムンプス性耳下腺炎)のあとにウイルスが精巣で炎症を起こす精巣炎なども考えられます。